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子どもの貧困率が高い市区町村はどこか?19歳以下の生活保護受給率に見る日本の格差

March 7, 2016
子どもの貧困率が高い市区町村はどこか?19歳以下の生活保護受給率に見る日本の格差

最近、山形大学の戸室健作准教授が、都道府県別の子どもの貧困率を算出し、大きな話題となった。
都道府県ごとに、貧困率には大きな差があり、日本国内でも住む場所による格差が存在することが、世間に衝撃を与えている。

とりわけ沖縄県の貧困率・子どもの貧困率はともにずば抜けており、実に37%を超える子どもが貧困の状態のもとで生活していることになるという。

この記事では、そうした地域間の貧困の格差に注目し、生活保護制度を切り口として、都道府県よりもさらに精緻に政令指定都市・中核市といった市単位での貧困率を分析してみたい。

私が、今回の分析と市単位のランキング化に用いたのは、19歳以下の生活保護受給率である。

生活保護を受給している世帯は、世間のイメージするところの「貧困」状態に比較的近いと考えられ、その比率が特に高い市町村があれば、かなり地域特性を明らかにすることができるはずだ。
また、19歳以下に絞って分析することで、高齢貧困世帯によるノイズを排除し、若年・子ども世帯の貧困の実態を地域別に把握することができると思われる。




地域別の生活保護受給率の算出方法

多くの人がニュースや新聞で目にしたことがあるだろうが、生活保護受給世帯の数が発表されるたびに、「生活保護世帯、過去最多を更新」という見出しがニュースで躍っている。
実際、日本の生活保護受給世帯は、基本的に右肩上がりの増加を続けているのだが、不況や高齢化がその主要な原因だと言われている。

そもそも、こうしたニュースのソースとなっているのは、厚生労働省の「被保護者調査」である。
この調査では、毎月生活保護受給世帯の数を公表している。
時折、前月を下回ることがあるが、漸進的に増加を続けているのが現状だ。そのため、年に何回も「生活保護世帯、過去最多」というニュースを目にすることになるわけだ。

この調査のデータを使用すれば、政令指定都市や中核市といった単位で、年齢階級別の生活保護受給者数やパーセンテージを調べることができる。
例えば、ある政令指定都市の65歳以上の生活保護受給者数を調べ、それをその市の65歳以上人口で割れば、65歳以上の生活保護受給率をはじき出すことができるのだ。

今回は、これを19歳以下の生活保護受給者について計算することによって、政令指定都市・中核市別の「子どもの生活保護受給率」を算出し、ランキング化していく。

都道府県単位の子どもの貧困の分析が話題を集める中で、さらに市単位で子どもの貧困の実態を見ることができる統計は貴重なので、興味深い結果が得られるはずだ。

子どもの生活保護受給率が高い政令指定都市ランキング

早速だが、平成26年の被保護者調査に基づいて、全国の政令指定都市について、19歳以下の子どもの生活保護受給率(基本的には親が生活保護を受給している世帯の子どもだと思われる)を算出した。
その結果、全政令市を整理すると、次のような結果が得られた。

001-生活保護-全政令市

まず最初に、19歳以下の子どもの生活保護受給率の全国平均を算出してみたところ、1.27%と、100人に一人程度にとどまっていた。

政令指定都市についてそれぞれ算出していくと、大阪市がズバ抜けて高く、4%を超える19歳以下の子どもが生活保護を受給していることがわかる。
政令市の中で最も19歳以下の生活保護受給率が低かったのは浜松市で、全国平均を0.5%ほど下回る結果となった。

それでは、この政令市別のランキング結果をより精緻に見ていこう。

002-生活保護-10政令市

図表2は、前掲の19歳以下の子どもの生活保護受給率ランキングを、上位10政令指定都市をピックアップして再度グラフにしたものだ。

これを見ると、関西地方の子どもの生活保護受給率が総じて高く、北海道もかなり高い水準にあることがわかる。

政令指定都市の中で、子どもの生活保護受給率が4%を超えているのは大阪市と札幌市のみである。
関西圏の貧困率が高いことは比較的広く知られているが、北海道が意外にも子どもの貧困が深刻な地域であることが分かった。

しかし、政令指定都市はそもそも数が少なく、北海道では札幌市以外の現状を把握することができない。
そこで、より算出する自治体の母数を増やすことのできる中核市の分析を行ってみよう。

子どもの生活保護受給率が高い中核市ランキング

被保護者調査では、政令指定都市と中核市の生活保護受給者数が別だしされているため、中核市についても、19歳以下の生活保護受給率を計算することができる。

中核市の方がより数が多いため、政令指定都市別のランキングと並べてみることで、地方ごとの特色を明らかにしていきたい。

003-生活保護-全中核市

グラフを見ればすぐにわかるように、北海道函館市が全ての政令指定都市・中核市の中でも最も子どもの生活保護受給率が高い市であることが分かった。
全体を見ると、4%を超える中核市と、1%程度に収まっている自治体で、かなり大きな差があることがわかる。

なお、数が多いため、1%を下回る自治体についてはグラフから除いている。

1%を下回った自治体は、大津市、船橋市、横須賀市、柏市、いわき市、岐阜市、前橋市、郡山市、豊田市、長野市、高崎市、金沢市、岡崎市、豊橋市、富山市の15中核市だ。
千葉・群馬・神奈川などの関東圏と、岐阜・石川・富山・愛知などの中部地方の中核市において、19歳以下の生活保護受給率が比較的低くなっているようだ。

中核市のうち群を抜いて低いのは富山市で、富山市の19歳以下生活保護受給率はわずか0.1%と、19歳以下の1000人に一人しか生活保護を受給していないことになる。
19歳以下の子どもの100人に4人が生活保護を受給している函館市や東大阪市と比べるとその差は相当なものだ。

それでは、中核市についても、上位10中核市をピックアップして、より精緻に差を見ていこう。

004-生活保護-10中核市

図表4では、地方ごとの差が明確になるよう、特に生活保護受給率の高い地域を色付けした。
政令指定都市のうち第2位となっていた札幌市を擁する北海道は青色、政令指定都市・中核市ともに多数の市が上位に食い込んでくる関西圏を緑色で示している。

やはり中核市でランク付けをしてみても、北海道はかなり生活保護の受給率が高い自治体が多い。
政令市の札幌だけでなく、中核市の函館と旭川においても、19歳以下の生活保護受給率は4%前後になっている。

また、やはり関西の貧困は深刻であり、大阪府内の東大阪市や豊中市、兵庫県の尼崎市など、関西圏の中核市はいずれも子どもの生活保護受給率が高いことがわかる。

「生活保護受給率」だけでは見えないもの

ここまで、政令指定都市と中核市について、19歳以下の生活保護受給率を通して、子どもの貧困を市単位で分析することを試みてきた。

結果として、千葉・群馬・神奈川などの関東圏と、岐阜・石川・富山・愛知などの中部地方では子どもの生活保護受給率が比較的低く、それに対して大阪を中心とする関西と北海道において子どもの生活保護受給率が深刻な水準にあることがわかった。

ただ、やはりこれらの統計だけでは見通せない要因も多いのが現実だ。

というのも、生活保護制度は、基本的に申請してきた者を対象として、公的給付を行う制度である。
それゆえに、仮に生活保護水準を下回る生活をしている人が大量にいたとしても、それらの人々が申請に来なかったり、あるいは申請しても自治体に拒否されている場合、たとえ貧困が深刻であっても生活保護受給率は低いままとなってしまう。

例えば、貧困世帯の支援を是とする自治体が、19歳以下の子どもがいる世帯に対して生活保護を積極的に認めていった場合、それに伴って19歳以下の生活保護受給率は高くなってしまうが、実態としては他の自治体よりも保護が手厚く、むしろ良い環境だと言える。

そのため、北海道において生活保護受給率が高く、富山県で生活保護受給率が低いという事実があったとしても、直ちに北海道が貧困で、富山が裕福な地域とは言えないのだ。

そこで、これまでの分析に加えて、さらに山形大学の戸室健作准教授が明らかにした都道府県別の「子どもの貧困率」のデータもグラフにして、政令指定都市・中核市の分析と並べてみることにする。

戸室(2016)における貧困率の算出方法は、総務省「就業構造基本調査」を用いて、生活保護の受給対象となる最低生活費以下の収入しかない世帯の率を分析している。
そのため、自治体の積極性や手厚さに左右されずに、純粋に生活保護水準で暮らしている子どものパーセンテージを見ることができるのである。

005-都道府県別子どもの貧困率

図表5は、都道府県別の子どもの貧困率をグラフで表し、ランキング形式に並べたものだ。

政令指定都市・中核市の19歳以下生活保護受給率ランキングに多数ランクインしていた関西圏と北海道は、図表5で47都道府県で比較した際にも比較的上位に入っている。
しかし、中核市のランキングでは大阪府内の市や北海道内の市と比べて19歳以下の生活保護受給率が下位であった沖縄県が、突出して高い貧困率を叩き出していることがわかる。
また、北海道よりも九州の福岡・鹿児島が貧困率が高かったりと、九州の各県も貧困率がかなり高い水準にあることがわかる。

このように、政令指定都市・中核市の19歳以下の生活保護受給率を見ていただけではわからなかった背後の実態を明らかにすることができるのである。
とはいえ、九州の自治体が上位に躍り出ただけで、政令市・中核市の生活保護受給率の分析と比べて、全体の傾向はそれほど変わらないとも言えるだろう。

全てを総合的に見ると、非常に大まかに言ってしまうことになるが、北海道・関西圏・九州の自治体では、実態としての貧困率と、制度上での生活保護受給率がともに高い水準になっている。
これに対して、神奈川・千葉・群馬・栃木などの関東圏や、岐阜・石川・富山・愛知など中部地方では貧困率・生活保護受給率がともに低い。

以上の分析を考慮すれば、日本においては、貧困が北と西に集中し、本州の中心では比較的貧困が少ない、と結論することができるのではないか。

About The Author

nipponomiaCo-Founder, Writer小松明
平成生まれ。神奈川出身。
米国でパブリック・アイビーの一つに数えられる州立大学への留学を経て、某旧帝大を次席で卒業。TOEIC満点。現在はNGO勤務。

英語の読解力にはかなりの自信があり、海外の学術論文からテック系ニュースまで、日々情報収集している。
主要な関心は日本、英米の社会保障制度。

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