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アメリカの社会保障番号から、日本のマイナンバー制度を考察する(Report from Abroad:001)

May 1, 2016
アメリカの社会保障番号から、日本のマイナンバー制度を考察する(Report from Abroad:001)

マイナンバー制度が昨年から始まり、マイナンバーの通知カードを受け取った人も多いであろう。
日本国内では、マイナンバーの導入に際して、セキュリティやプライバシーを始めとする様々な議論が巻き起こった。

この点、アメリカは、マイナンバー類似の「社会保障番号」という制度を1930年代から導入しているマイナンバー制度の先進国である。
マイナンバーは、もはや日常生活と切り離せないほどにアメリカ市民の生活に入り込んでいる。

実際に、アメリカ人はマイナンバーのことをどう思っているのだろうか?
そこで、私の知り合いで誰かアメリカ人の意見を聞けないかと思い、日本で英語教師をした経験もあるアメリカ人のBさんに、日本のマイナンバー制度について聞き、簡単な英文レポートを執筆してもらった。

今回は、アメリカ人が社会保障番号をどのように考えているかを、現地の生の声で語ってもらい、それを翻訳し、日本のマイナンバー制度について考えてみる。

また、せっかく英文記事をアメリカ人に書いてもらえるので、これを英語教材しても活用しようと考えた。
英文に翻訳をつけるだけではなく、覚えておくべき英語の重要表現なども解説しながら、英文解釈を行っていく。

時事ネタを英語で読みながら、日本社会について考える。
今後、こうしたスタイルの記事は「Report from Abroad」シリーズとして連載していくので、期待していてほしい。

「Report from Abroad」シリーズとは
 友達の外国人が執筆した英文レポートを読み解き、英語学習をしながら、日本の未来を考察する連載シリーズです。
 日本に関する英文記事を、知り合いのアメリカ人に書いてもらったら、面白いコンテンツができるのではないかと考え始まりました。毎回、様々なバックグラウンドを持つ外国人に、海外から見た日本の姿や、海外のニュースからみる日本社会の考察など、質の高いコンテンツを執筆してもらいます。
 それぞれの英文レポートには、TOEICやTOEFLの高得点者が多いnipponomiaのライター陣が翻訳を行い、英文法や単語の解説も付けているので、英語学習者・英文読解初心者にも読みやすいレポートになっています。




アメリカ人教師が英語で語る!マイナンバー制度と米社会保障番号

Is there a My Number system in the U.S?
「アメリカにマイナンバー制度はあるのか?」日本語訳

 In October of 2015, Japan launched the Social Security and Tax Numbering System, more commonly known as My Number. The initial rollout was preceded by an ad campaign featuring actress Aya Ueto and mascot Maina-chan.Some of the goals of the program are to make taxation and social security more streamlined for the government and general public, as well as prevent tax evasion and welfare fraud. However concerns over privacy and security continue.

 2015年10月、日本政府は、「マイナンバー制度」として知られる社会保障・税番号制度を開始した。制度の開始に先立って、女優・上戸彩とマスコットキャラのマイナちゃんによる広告キャンペーンが展開された。この制度の目的の一部は、政府と市民のため税と社会保障をより合理化し、また課税逃れや福祉の不正受給を防ぐことである。しかし、プライバシーやセキュリティに関する懸念は継続している。

 In the United States, all citizens are also given a number that they will keep for the rest of their lives. This is called a Social Security number. Most children are assigned a number shortly after they are born. In fact, parents can apply for a Social Security number for their baby at the hospital.

 アメリカでは、すべての市民が、一生使用し続けるナンバーをあたえられる。これは、社会保障番号(Social Security number)と呼ばれる。大部分の子供は、生まれた直後にナンバーを割り当てられる。実際に、両親は自身の子供の社会保障番号を、病院で申し込むことができる。

Social security card

 The Social Security number has nine digits and the first cards were given out in 1936. Since then, these numbers have become an important part of life for American citizens. The Social Security number is used for taxes and social security, like in Japan, but it is also very important for identification. It is used for a variety of things in the United States. For example, citizens may need their Social Security number to open a bank account, get a cell phone, get a credit card, rent an apartment, apply for a job, and even to get a driver’s license. The number is so important that most citizens actually have their number memorized!

 社会保障番号は9桁で、1936年に最初のカードが発行された。それ以来、これらの数字[9桁の社会保障番号]は、アメリカ市民の生活の重要な一部となっている。日本のように、税や社会保障に使用されるだけでなく、身分証明としても重要である。アメリカでは、社会保障番号が様々なことに使用されているのだ。例えば、銀行口座を開くため、携帯電話を手に入れるため、クレジットカードを作るため、アパートを借りるため、仕事に応募するため、そして自動車運転免許証を手に入れるためにも、市民は社会保障番号が必要になる。多くのアメリカ市民が自身の社会保障番号を記憶しているほどに、社会保障番号は非常に大切なものなのである。

 However unlike in Japan, you usually don’t need your card, only your number.In fact, people are discouraged from carrying their card. If you lose your Social Security card, you cannot just change or cancel the number. It is a number to be used for the rest of your life, so losing your card could cause problems for a very long time.

 しかし、日本の場合と違って、普段はカードは必要なく、番号さえあればいい。実際、自身のカードは持ち運ばない方が良い。もし社会保障番号カードをなくしてしまうと、番号を変えることも、キャンセルすることもできない。生涯にわたって使用されるナンバーであるから、カードを紛失することは長期間にわたって問題を引き起こすのである。

今回の英語長文の英単語・英熟語・重要表現まとめ!

上記の英語長文から、特に重要な英語表現や英単語をピックアップして、解説していく。
今回のテーマについて考えるだけではなく、せっかくの英文なので英語学習の参考にしてもらえれば幸いだ。

英語重要表現1「be preceded by〜」

第一パラグラフでは、マイナンバー制度のスタート時に行われた広告キャンペーンのことを表現する文の中で、次のような一文が使われていた。
The initial rollout was preceded by an ad campaign…
パッと見ただけでは、どういう意味か分からなかった人もいるかもしれない。

これは、precede(〜より先に起こる)という他動詞の受動態を使った熟語表現である。
「A is preceded by B」で、直訳すると「Aは、Bに先行される」という意味になる。

ここでは、「[マイナンバー制度の]開始に先立って、広告キャンペーンが展開された」と訳しておいた。

英語重要表現2「streamlined」

「streamline」という単語は、「流線型」という意味の名詞である。単語の言葉そのままの意味なので、非常に覚えやすい単語だろう。
しかし、実は名詞としての機能だけではなく、他動詞としての機能もあり、「〜を流線型にする、〜を合理化する」という意味がある。

第一パラグラフでは、
make taxation and social security more streamlined…
という一文があったが、これは”taxation and social security”を、もっと”streamlined(合理化)”されたものにするという意味である。

英語重要表現3「welfare fraud」

第一パラグラフに登場する「welfare fraud」という表現は、単純な名詞表現であるが、社会保障制度や、生活保護関連の英文を読んでいると、頻繁に登場するので覚えておきたい。
「Welfare」で「福祉、生活保護手当」という意味で、「Fraud」で「詐欺、イカサマ」という意味だ。
ここでは二つ合わせて、生活保護や福祉給付の不正受給といった意味で使用されている。

英語重要表現4「…but it is also…」

第三パラグラフに登場するこちらの表現は、中学や高校でも習う定番の英語構文「A, but also B」(=AだけでなくBも)が使用されている部分だ。

第三パラグラフの該当部分を分かりやすく訳すと、「社会保障番号は税や社会保障にも使われているが、それだけではなく、身分証明にも使用されている」となる。

英語重要表現5「…so important that…」

第三パラグラフに登場する「so important that」の部分は、日本語に訳すのが少し難しく感じる英語的な表現である。
「A is so XXX that YYY」で、「Aはとても XXX なので YYY 」とか、「 YYY するほどAは XXX である」といった意味になる。

第三パラグラフでは、
The number is so important that most citizens actually have their number memorized
となっていたが、that節以下のYYYの部分を「多くのアメリカ市民が自身の社会保障番号を記憶しているほど」と訳し、so以下のXXX部分を「社会保障番号は非常に大切なものなのである」と訳した。

実際に英文和訳をする時には、このように臨機応変に自然な表現になるように文の順序を変えて訳す必要があるので、ぜひ覚えておきたい重要表現である。

英語重要表現6「…have their number memorized」

最後のパラグラフに登場したこちらの表現だが、高校で英語の勉強をそれなりにしっかりやった人ならば、すぐに「have A done」の構文が頭に浮かんだのではないか。

「have(get) A done」には、大きく3つの意味があるので、すべてきちんと覚えておきたい。

  • 「have(get) A done」=完了「Aを・・・してしまう」
  • 「have(get) A done」=使役「Aを・・・してもらう/させる」
  • 「have(get) A done」=被害の受け身「Aを・・・されてしまう」

使役と被害の受け身は、記憶している人も多いかもしれないが、完了「Aを・・・してしまう」という意味もあることを忘れてしまいがちなので気をつけよう。
第三パラグラフの「most citizens actually have their number memorized」の部分は、「彼らのナンバーを記憶してしまう」と完了の意味で訳すのが正解だ。

マイナンバー制度の懸念点は、日米共通

上記のレポートの中でBさんが言っている通り、アメリカにおける社会保障番号(ソーシャルセキュリティーナンバー)は、アメリカ社会全体のシステムの中に位置付けられ、役所に行く時や、契約をするときなど、重要な場面では大抵社会保障番号が必要になる。

今のところ、日本のマイナンバーは、個人に関係のあるところでは税務署に提出する確定申告書や、年金の資格確認に使用される程度であろう。
まだまだマイナンバーカードを実際に使用する場面は少ないが、アメリカのように重要な身分証明書の一つとして使用されることになる日は近いかもしれない。

実際、マイナンバー通知カードを受け取った後、ICタグ・証明写真入りのマイナンバーカードを作成すれば、写真付きの身分証明書として使用できたり、図書館利用などの場面でも使用できたりと、日本でもかなりアメリカの社会保障番号の状態に近くなる。

あらゆる行政サービスと紐づくようになると、当然日米共通の課題として浮かび上がってくるのが、個人情報の安全性や、プライバシーが暴かれることへの懸念である。
日本でマイナンバー制度に対して批判的な立場をとる人々は、多くの場合「個人情報が漏れるのではないか心配」ということを根拠にしている。

実際、アメリカでは、2014年にソニーがハッキングされ、ソニーの労働者47,000人分の住所、所得、個人情報が漏洩した事件が発生したことが話題になった。
また、上記レポートにもある通り、カードを利用者自身が落としてしまう可能性もある。

日本でも、給料を労働者に対して支払うために、企業がマイナンバーを収集することになるため、アメリカのソニー事件と同様の問題が生じる可能性は非常に高い。
企業経由でマイナンバーが漏洩すれば、少なくとも個人名・所得・マイナンバーが明らかになってしまう懸念が生じるわけだ。

とはいえ、日本のマイナンバー制度は、当然諸外国の前例を見ながら制度設計されているがゆえに、一箇所にすべての情報が集約されないような工夫がなされている。
仮に、マイナンバーと個人名が漏洩してしまったとしても、それを使用して即座にその人物の個人情報や行政サービスにアクセスできるようになるわけではない。

落とした場合も名前とマイナンバーが知られてしまうことになるが、マイナンバーカードは、悪用を防ぐために顔写真が挿入されているため、若干リスクは低下すると言えるだろう。

必ずしも、ナンバーそのものは他人に知られても問題はないのだ。
もちろん、漏洩した場合には様々な悪用リスクがあるので、漏洩しないに越したことはないのだが・・・。

むしろ、マイナンバーが使用されることによるメリットも考えるようにしたい。
住民票の発行などで、市役所で永遠と待たされる不快感が仮に軽減されるとすれば、それだけでもマイナンバーがもたらしてくれる恩恵は非常に大きいし、当然行政コストも削減される。

「なんとなく危なそう」だからマイナンバーを避けるのではなく、諸外国の事例も参考にしながら、自分のマイナンバーをどう扱うべきか、自分の会社はマイナンバーのセキュリティをどう考えているのか、行政の安全対策は十分かなど、建設的な議論が行われることに期待したい。

Photo credit: frankieleon via Visual hunt / CC BY

About The Author

nipponomiaCo-Founder, Writer小松明
平成生まれ。神奈川出身。
米国でパブリック・アイビーの一つに数えられる州立大学への留学を経て、某旧帝大を次席で卒業。TOEIC満点。現在はNGO勤務。

英語の読解力にはかなりの自信があり、海外の学術論文からテック系ニュースまで、日々情報収集している。
主要な関心は日本、英米の社会保障制度。

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