2016年第1四半期の世界スマートフォンの出荷台数に関するレポートが発表され、主に中国を中心とするアジア勢の世界スマホシェアが急速に伸びていることが明らかになった。
しかし、同じ中国系のスマートフォンメーカーでも、中国のXiaomiとLenovoが上位5位以内から陥落し、代わりに同じく中国のスマホメーカーであるVivoとOPPOが一気に上位5位以内に飛び込んでくるなど、中国勢同士の熾烈な争いが見て取れる結果となった。
最新のレポートを、2015年第4四半期のスマートフォンの世界シェアとも比較しながら、激動するスマートフォンシェア戦争を覗いてみよう。
また、スマホシェアで上位に躍り出た急成長中の中国新興スマートフォンメーカー「Vivo」と「OPPO」が、一体どのようなスマホメーカーなのかも詳細に説明していく。
2016年第1四半期の世界スマホシェアまとめ
定期的に世界のスマートフォンの出荷台数や、市場シェアに関するレポートを発表しているIDC(International Data Corporation)が、2016年第1四半期のスマートフォン出荷台数に関するレポートを4月28日に発表した。
この最新レポートによると、2015年に上位に君臨していたスマートフォンメーカーたちの顔ぶれが、少し変わっている。
こちらのグラフをご覧いただければ分かるように、2016年第一四半期のスマートフォンの世界出荷台数ランキングは、第1位が韓国サムスン、第2位が米Apple、第3位が中国Huawei(ファーウェイ)、第4位が中国のスマホメーカーOPPO、第5位が同じく中国のVivoという結果になった。
世界シェアの第一位に君臨し続けるのは韓国のサムスンで、その強さは依然として圧倒的だ。
日本ではiPhoneばかり目にするので、少し意外に思われる方も多いかもしれないが、Appleもサムスンには及ばず、2016年Q1の世界シェアでは10パーセントもの差がついてしまった。
Huaweiは、Googleが販売するスマートフォンであるNexusシリーズの受注生産を行っているなど、自己ブランド以外での端末の売り上げも多分に含まれてはいるが、中国勢のスマートフォンの急成長を代表するメーカーとして、多数のスマホを出荷している。
Huaweiはすでに日本への進出も果たしており、格安SIMを販売するMVNOから端末が売られていたり、ネット上でもHuaweiのSIMフリー端末を購入することが可能だ。
2015年のスマホシェアはどうだったのか?中国Xiaomiの王座陥落
2016年のスマホシェアの結果だけを見ても、変化が捉えられないので、2015年第四四半期のスマートフォンシェアも見てみよう。
上位3社のサムスン、Apple、Huaweiは、2016年も2015年もランキングは変わらず、それぞれ若干シェアに変化があるという程度だ。
Appleは、2015年第四四半期は18パーセント超のシェアを有し、サムスンに肉薄していたが、2016年第一四半期は前述した通り15パーセントとシェアを落とし、サムスンとの差を広げられてしまった。
ここで特に注目すべきなのは、グラフで強調した中国Lenovoと中国Xiaomiが、2015年には上位5位以内に入っていることである。
LenovoとXiaomiは、2016年には後続のOPPOとVivoに追い抜かれてしまい、上位5位以内から陥落してしまった。
Xiaomi(シャオミ)は、その驚異的な成長スピードから高い注目を集めた中国の新興スマートフォンメーカーである。
2010年に設立されたXiaomiは、2014年には前年比300%以上の成長率で6,100万台ものスマートフォンを販売したほか、投資家から10億ドルもの資金調達にも成功し、テック系の私企業では世界で最も高額の時価総額450億ドル企業と呼ばれた。
ここにきて、中国の他のスマートフォンメーカーも急速にXiaomiを追い上げており、OPPOやVivoが上位5位以内に入り、XiaomiとLenovoを蹴落としたのは非常に象徴的だ。
中国のスマホメーカー「Vivo」と「OPPO」とは何者か?
それでは、2016年第一四半期の世界スマートフォン出荷台数シェアの上位に、突如として現れたOPPOとVivoとは、どのようなスマートフォンメーカーなのであろうか。
それぞれのメーカーの代表的な端末を取り上げて、そのOPPOとVivoの特徴をまとめてみる。
高級路線で急速に人気を高める中国のニューウェーブ「Vivo」
Vivoは、2009年に中国で設立されたスマートフォンメーカーで、Hi-Fiチップを採用した非常に高音質なオーディオを楽しめるスマートフォンを販売してきた。
世界で最も薄いスマートフォンとして注目を集め、2014年に発売されたVivoの「X5Max」という端末は、わずか4.75mm(iPhone6sは7.1mm!)という驚異的な薄さを誇り、それでいて1300万画素のカメラやオクタコアチップを採用する高スペックぶりで、Xiaomiよりも若干高級路線を行くラインナップが魅力であった。
もちろん、Androidを搭載したスマートフォンなので、中国だけでなく世界のユーザーでも使用することが可能だ。
さらに、今年2016年にVivoが発表した「Xplay5S」という端末は、現状最強・最新のチップであるクアルコムのSnapdragon 820を採用し、世界で初めて6GBのメモリを搭載するなど、ありえないほどのハイスペックスマートフォンである。
「Xplay5S」は、外観も非常に高級感があるほか、その価格は米ドルでおよそ650ドルと、格安の300ドル台で高スペック端末を提供するXiaomiのビジネスモデルとは対照的である。
(Reprinted from vivo.com)
こちらの画像の「Xplay5S」がその最新のハイスペックAndroidスマートフォンであるが、Galaxyで採用されていた曲面ディスプレイなど、最新のトレンドを取り入れた端末になっている。
外観のデザインも、他のブランドのスマートフォンに非常に似ている部分もあるが、高級感を出すことには成功している。
端末の薄さや高音質なオーディオなど、ほかにはない高付加価値を提供しながら、Appleに似たデザインで若者の心をつかみ、高級路線で販売を伸ばすことに成功しているようである。
徐々にシェアを伸ばす中堅スマホメーカー「OPPO」
OPPOは、2005年に設立された電気機器メーカーで、もともとMP3プレイヤーなどを販売していた。
のちに、スマートフォンの販売を開始し、「フラグシップキラー」のフレーズで有名な高スペック格安スマホメーカー「OnePlus」を子会社として立ち上げているほか、精力的に世界中へスマホの販売を続けている。
日本では、Xiaomiほど注目されていないが、着々とその販売台数を増やし、2016年Q1にはついにXiaomiを追い抜くに至ったというわけだ。
その端末コンセプトは、Vivoと同様に比較的ハイエンドスマートフォンという方向で、デザインもAppleなどに近い傾向がある。
最新の端末である「Oppo R9」は、およそ425ドルという低価格でありながら、Snapdragon 652や、4GBのRAMを備える高スペック端末だ。
(Reprinted from oppo.com)
外観はかなりiPhoneに近いものと言わざるを得ないが、中国のスマートフォンメーカーの最近の流行のデザインと言ってしまえばそれまでだ。
OPPOの価格帯・スペックは、ともに比較的Xiaomiに近いものがあるため、今後より一層Xiaomiとの競争は激化していくであろう。
中国の新興スマートフォンメーカーの日本進出の日も近い?
Huaweiや、Xiaomi、OPPO、Vivoなどの中国の新興スマートフォンメーカーは、特にアジア圏を中心に熾烈なシェア争いを繰り広げている。
これまで、市場としては中国本土とインドなどの新興国が対象として拡大を続けてきたが、ここまで競争が激化してくると、日本への進出もありえないことではないだろう。
日本であれば、中国からスマホを輸送し、販売するコストもそれほどかからず、知名度を得ることに成功しさえすれば一定のブランドを築くことは可能だろう。
それでいて、Vivoなどの高級路線のハイスペックスマートフォンが、iPhoneよりも数万円安く購入できるとなれば、スマートフォンを選ぶときの現実的な選択肢に十分なりうる。
Xiaomi、Vivo、OPPOの日本進出の噂はまだ聞こえてこないが、数年後には、電気屋の店頭にこれらの中国製スマートフォンがずらりと並んでいる光景が見られるかもしれない。
スマホのコモディティ化が進む中で、多数の中国や台湾のメーカーがしのぎを削るパソコン売り場と同じ状況が、SIMフリースマホ売り場で繰り広げられる可能性は高い。
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