高齢化が話題になって久しいが、日本の高齢化は急速に進んでいる。現在国民のおよそ4人に1人は65歳以上の高齢者であり、その割合は今後も増え続ける見込みである。
そんな中、政府は「地域包括ケアシステム」の構築を推進している。「地域包括ケアシステム」とは一体何なのか。増え続ける高齢者の支援体制は一体どうなってゆくのか考える。
そもそも「地域包括ケアシステム」とは?
厚生労働省は「地域包括ケアシステム」について、「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制」のことであると述べている。
ここで重要なのは、「住み慣れた地域」、「自分らしい暮らし」という部分である。従来高齢者は、病院やいわゆる老人ホームで最期を迎えることも多かった。家庭的ではない、大人数の部屋でプライバシーもない、そういった環境に置かれることが問題とされることもあった。
そこで、今回の「地域包括ケアシステム」推進にあたっては、病気になったりや介護が必要な状態に陥っても、できるだけ「住まい」(今まで住んでいた家やサービス付高齢者住宅など)に住み続けるということが目標にされている。
また、「地域包括ケアシステム」のもう一つの特徴は、市町村や都道府県やその主体性を発揮して実施する、とされている点である。出来るだけ住み慣れた環境で暮らし続けるためには、医療・介護・町内会や老人クラブなどの生活支援を行う団体などが協力して、「自分らしい暮らし」を続ける高齢者を支え続けなければならない。地域にどんな医療・介護・生活支援の担い手がいるかは当然地域によって異なるので、その地域のことを一番よく知っている市町村や都道府県が実際の業務を行うべきということだろう。
「自分らしい暮らし」「地域の主体性」とは言うけれど……
しかし、「住まい」に住み続けることは本当に高齢者のためになっているのだろうか。「地域包括ケアシステム」の推進と連動して、政府は老人ホームへの入居を抑制してきた。その結果、老人ホームの入居は月単位、年単位で待たなければならないという現状が発生した。そしてそれは無届けの高齢者施設の増加へとつながってゆく。無届け施設は行政が把握・監視できないため、劣悪な環境に置かれたり、事故が発生することもある。「クローズアップ現代」の調査では、無届けの施設は東京都内だけで86か所もあり、全く珍しい話とは言えなくなってきている。「住まい」に住み続けることにこだわるあまり、高齢者の現状が見えなくなっているのではないだろうか。
また、「高齢者支援については自分たちで考えてやって下さい」というのは、市町村、特に資金も人的資源もない北海道のような場所では、難しいのが現状だ。札幌市内のとある区役所で「地域包括ケアシステム」について話を伺ったことがあるが、彼らも「地域の自主性・主体性」というものをどのように発見し活用していけばよいのか戸惑っている様子だった。政府としては自治体に先導してアイディアを出してもらって、上手くいった事例の中から今後の具体策を決定したいようだが、果たしてそれはどこまで成功するだろうか。
「住み慣れた地域」で「自分らしい暮らし」をし、それを地域が支えてくれる――この理想を実現することはできるのだろうか。日本の高齢者福祉は大きな転機を迎えている。