日本の「貧困」は何処にあるのか?東京の「貧困のありか」をデータで見る

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「ワーキングプア」や「ひとり親家庭の貧困」、「子供の貧困」といった問題が話題になって久しい。
最近では「6人に1人の子どもが貧困」などと言われ、あたかも貧困が日本中に蔓延しているかのように語られているが、多くの人の実感としては、まさかそんなに多くの人々が「貧困」状態にあるなんて、とても信じられないのではないか。

身の回りを見ても、ホームレスなどを除いて、いかにも貧困状態にある、なんて人を見かけることはない。
しかし、例えば「6人に1人」の子どもが貧困なのであれば、40人学級であればクラスに6人の貧困世帯の子どもがいることになる。

本当に貧困はそれほどまでに蔓延しているのだろうか?
もしそうだとすれば、どの場所に貧困が集中し、またそれはどれほどの割合なのだろうか?

省庁のサイトで入手できるデータなどから、東京の貧困の分布を調べてみよう。




地域別「就学援助率」で見えてくる貧困の所在

つい先月(2015年10月)、文部科学省は、貧困の所在を考える際に大いに注目すべきデータを初めて公開した。そのデータとは、市区町村別の就学援助率の調査結果である。

これまで、要保護・準要保護児童(就学援助の対象となる児童)の数は、都道府県別のデータしか公開されておらず、非常に大雑把にしか地域別の貧困の実態を比較分析することができなかった。
しかし、子供の貧困対策法・大綱の中で、自治体に対して貧困対策の実施が求められていることもあってか、市町村レベルでも定期的に調査・公表を行なっていく方向にシフトしてきたようである。

市町村別では就学援助率の5パーセント刻みのデータしか公表されていないため、ざっくりとしか比較することはできないが、地域別の貧困を把握するにあたり貴重なデータであることは間違いない。

そもそも就学援助とは何か?

まず、就学援助について考える前に、なぜ無償で義務教育が提供されているはずの日本において、学校費用を公的に補助する必要があるのかを考えておきたい。

教育基本法は、「義務教育については、授業料を徴収しない」と定めている。実際、現在の日本では公立小・中学校の授業料と教科書代は無償である。
しかし、義務教育期の子どもにかかる費用は、授業料と教科書代だけではない。学校に通わせている・通わせたことのある人ならご存知であろうが、様々な出費が伴うものである。

151108学校教育費グラフ

特に公立の中学校では、交通費、部活、修学旅行などにそれなりの出費が必要になり、無償の義務教育とは言っても年間13万円超の出費が必要になる。

生活保護世帯の小・中学生の子ども(要保護児童)の場合、義務教育に伴って発生する学校給食費や学用品費は、生活保護制度上の教育扶助の対象となり、給付される。
一方、就学援助は、生活保護世帯であるが教育扶助を受けていない子ども(要保護児童)、生活保護基準ほどではないが経済的に厳しい子ども(準要保護児童)について、そうした義務教育に伴う出費を補助するための制度である。
また、生活保護と教育扶助をともに受けていたとしても、教育扶助は修学旅行費をカバーしていないため、それを補うため生活保護世帯に対しても就学援助は給付される。

これを図に整理すると以下のようになる。

151108就学援助

準要保護者は、「生活保護に準ずる経済状況」と市区町村によって認定された者であるが、どのような場合に「生活保護に準ずる経済状況」と認定するかは、市区町村によって基準が異なる。
したがって、市区町村間の就学援助率を比較する際には、各市区町村の認定基準を注視する必要がある。

東京都区部・市部の就学援助率ランキング

それでは、いよいよ東京都の市部・区部の就学援助率と、それぞれの市区の就学援助基準の目安額を整理してみよう。

151108東京都援助率ランキング

各市区の就学援助率は、すでに述べたように5%刻みで公開されており、東京都内では最も高いのが足立区の「35%以上40%未満」となる。

就学援助を受給している児童が40%にも及ぶというのは、直感としても驚異的な数字に思えるであろう。
単純に考えれば、足立区の40人学級であれば、実に16人もの生徒が就学援助を受給している計算である。
足立区の就学援助を受給する基準額は399万円であるから、例えば福生市の265万円と比べれば、そもそも基準が高いために受給者が増えていることが想像されるものの、子供の貧困は一定のレベルで足立区に集中していることが分かった。
また、就学援助率で上位にくるのは東京特別区ばかりであるという点も興味深い。沖縄や高知市などの地方も相対的貧困世帯の数や就学援助受給率が非常に高いことで有名だが、逆に都心にも貧困は集中するようである。

貧困は東京の”ココ”にある!複数の指標で上位にくる区

貧困の所在を考える時に、就学援助率と並べて見てみたいデータとして、市区町村の住民一人あたりの生活保護費がある。
これは、自治体の歳出のうち、生活保護に当てられている総額を、住民の人数で割った値である。

151108一人あたり保護費ランキング

このグラフは、東京都における住民一人あたりの生活保護費を計算し、東京都内上位15市区を並べ、上記の就学援助率のランキングと同じ色分けを行ったものだ。
例えば、就学援助受給率が40%以上であった足立区は、本グラフでもピンクに色分けされている。

この両方のグラフで上位に上がる自治体は、住民数に比して貧困が深刻なレベルにあり、かつ子どもの貧困(=子どものいる世帯の貧困)のレベルも深刻な自治体であると言えるだろう。
もちろん他にも考慮すべき指標はあるだろうが、この2つのデータから、ある程度その地域の貧困の現状が把握できるのではないか。

就学援助受給率が40%未満・35%未満だったグループの区について見ると、それらの区の全てが一人あたり生活保護費ランキングでも上位10位以内に入っていることがわかる。

というわけで本記事では、あくまで一部の統計のみを見て比較した結果ではあるものの、東京都における「貧困のありか」は、足立区、板橋区、荒川区、墨田区、台東区、江戸川区の6区であると結論しておきたい。

貧困対策は、我々一人一人のサイフに関わる問題である

上記の貧困が集中していると思われる6区は、例えば足立区が子どもの貧困対策を矢継ぎ早に発表しているように、「貧困」というテーマが区政や財務状況をも左右する大きなアジェンダになり得る自治体と言える。

なぜなら、これはその区に住む住民一人一人にとって、死活問題とも言える問題であるからだ。
例えば台東区の住民一人あたりの生活保護費を考えれば、(国庫補助を考えず極めて単純化すると)ある1人の住民が納めた税金のうち年間10万円以上が生活保護費に消えていることになる。
さらに、次世代にも連鎖するとされる貧困を放置すれば、将来的にはより一層自らのサイフを締め付けることになる。

「貧困対策」は、どちらかといえば左派的な思想の延長にあるとされがちであるし、「貧困」らしきものが身の回りでは見えてこないことから、これまで日本においてはナショナルアジェンダになることはなかった。
しかし、今回いくつかの統計を分析して明らかになったように、東京都内でも貧困はかなり深刻なレベルに達しており、かつそれは我々一人一人のサイフを締め付けるほどの問題になりつつある。

特に貧困が深刻な地域においては、そこに住む住民が問題を認識し、行政に対し積極的に対策を求めていくことが肝要であろう。ゆくゆくは、それが自分の、あるいは自分の子どもの将来負担に影響してくるはずだ。

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