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全学テ分析:親の所得が子の学力を決める。貧困に勝つカギは「読書」か

全学テ分析:親の所得が子の学力を決める。貧困に勝つカギは「読書」か

お茶の水女子大学は、全国学力・学習状況調査の結果を用いて、子どもの学力を左右するものは一体何なのかを突き止めようとしている。
その結果から見えてきたのは、親の所得や、家庭環境といった、子ども本人の努力ではどうしようもない要因による「格差」の存在である。

今回は、全国学力・学習状況調査と、お茶の水女子大学による分析データを整理し、「学力の差」が何によって生じるのかを見ていこう。




学力テストの結果を使った学力の決定要因分析

「全国学力・学習状況調査」は、日本全国の小中学校の最高学年を対象に行われるテストで、一般的には「全国学力テスト」と呼ばれる。
テストは算数、国語、理科の3教科について行われ、それぞれの科目について知識力を問う問題(A)と、知識活用力を問う問題(B)が設定されている。

平成25年度の全国学力・学習状況調査では、本体のテスト調査にあわせて、保護者に対する調査が併せて実施された。
これによって、子どもの学力テストの結果と、保護者の様々なステータスが、どのような関係に立つのかを分析することが可能になった。

文部科学省は、お茶の水女子大学にこのデータの分析を委託しており、お茶の水女子大学の耳塚教授、浜野教授など教育や児童心理の専門家が参加して分析を行っている。

この研究は、家庭や地域、学校、教育委員会等の施策のうち、どの要素が子どもの学力と深い関係にあるのかを明らかにした点で画期的である。
しかも、単に学力格差の存在を明らかにするだけではなく、それを克服するためにはどのような取り組みが有効なのかまで、統計的に分析を行っており、日本の教育施策や家庭支援のあり方を考えるに当たって重要な資料となる。

結果はPDFで発表されており、ネット上で誰でも閲覧することができるようになっているが、非常に長い文章なので、注目すべき箇所を要約しまとめていく。

世帯の収入が、子どもの学力を決める

最も象徴的なデータは、世帯収入と学力テストの結果のあからさまな相関であろう。
世帯の年収が高ければ高いほど子どものテストの点数も高く、年収が低ければ低いほど子どもの学力も下がる。

以下にグラフを示すが、グラフの縦軸は正答率を表しており、横軸が世帯年収である。両者の数値が、非常に綺麗に相関していることがパッと見てわかるだろう。
算数の結果では、世帯年収が最も高い子どもと、世帯年収が最も低い子どもを比べると、正答率に実に18〜25%もの差が生じていることが分かる。

Correlation income math

算数だけではなく、国語についても同様の結果である。
世帯年収が最上位の子と最下位の子を比べると、20%近い差が生じている。

Correlation income japanese

上記のグラフは、あくまで結果表をグラフに整理し直しただけのものであるが、同じ論文の中で、回帰分析を用いたより詳細な統計的分析も行われている。
それによれば、やはりこうした要因が子どもの学力と強い関係を持っていることは明らかなようだ。

……分析では、教科や問題の違いを問わず、小学校・中学校の両方でSESが高い保護者の子どもほど学力テストの正答率が高い傾向が認められた。

……小学校と中学校を比べると、前者のほうが他の変数を統制した後もSESスコアの影響力が強く認められた。子どもの年齢が相対的に低いほうが、保護者の社会経済的な背景の影響が強いことを予想させる結果である。

引用:お茶の水女子大学(2014)「平成25年度 全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」p.66

なお、ここで言う「SES」とは、世帯の所得に加えて、父親と母親の学歴という要素を組み合わせた指標のことである。

親がどれだけお金を持っているか、親がどれだけ高学歴かという要因によって、子どもの学力が左右されるということが統計的に明らかになったのである。

逆境に立ち向かうには、保護者から子どもへの働きかけが重要

ここまで見てくると、所得の少ない家庭に生まれた時点で、もう人生がゲームオーバーであるかのように思えてくる。

しかし、低所得世帯の子どもであっても、優れた学力を身につけるのは不可能ではないようだ。
親の所得も低く、低学歴な家庭にあるにも関わらず、学力が最上位層の子どもも存在するのである。
そうした子どもは、小さい頃に親から本などを読むように勧められたり、親と一緒に図書館に行った体験があることが分かった。

[SESが最も低いが、高学力の子どもの家庭では]、保護者が「子どもに本や新聞を読むようにすすめている」「子どもが小さいころ、絵本の読み聞かせをした」「子どもと一緒に図書館へ行く」傾向がある。

引用:お茶の水女子大学(2014)「平成25年度 全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」p.121

そして、統計的な分析の結果、特に重要だと思われるのが「読書」であるという。

家庭における読書活動、生活習慣に関する働きかけ、親子間のコミュニケーション、親子で行う文化的活動、いずれも学力に一定のプラスの影響力がある中で、特に家庭における読書活動が子どもの学力に最も強い影響力を及ぼすことが明らかになった。

家庭における読書活動を通して、子どもは、文脈の中の言語の価値を理解したり、読む習慣を身につけたり、新しいことを学んだり新しい情報を収集する力を習得していると推測される。
……SESの高い保護者ほど、このような行動・関わり方を積極的に行っている……。

引用:お茶の水女子大学(2014)「平成25年度 全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」p.55-56

残念なことに、世帯所得や親の学歴の低い家庭ほど、教育に関心が薄いためか、こうした活動を行うことが少ないと思われる。
逆に、高所得・高学歴の世帯では、親が非常に教育を重視しており、小さい頃から読み聞かせや読書を通じた関わりを積極的に行うため、より一層格差が拡大していくことになる。

貧困世帯の子どもに必要な支援とは

生まれた家庭により、子どもの学力や将来の選択肢が制限されてしまう現状に対し、一体何ができるだろうか。

現在、所得の低い世帯の子どもに対する公的な支援は、現金の付与に限られてしまっていると言える。
生活保護や就学援助といった公的給付を強化しても、親の子どもへの関わり方は変えることができない。
今回紹介したようなデータを見ると、お金だけでは子どもを自立に導くことができない可能性が高いように思われる。

上記のようなデータを踏まえて、支援のあるべき姿を検討するならば、親の教育に対する意欲を高め、親から子どもへの読み聞かせや生活習慣の指導など、教育的働きかけを増加させることが重要である。
現金給付以上に、家庭学習の指導や、家庭訪問など、より家庭に対する外部からの関わりを強化すべきなのかもしれない。

徐々に研究で明らかになりつつある子どもの学力の決定要因を踏まえて、今後の教育・福祉政策のあり方を議論することが求められている。

About The Author

nipponomiaCo-Founder, Writer小松明
平成生まれ。神奈川出身。
米国でパブリック・アイビーの一つに数えられる州立大学への留学を経て、某旧帝大を次席で卒業。TOEIC満点。現在はNGO勤務。

英語の読解力にはかなりの自信があり、海外の学術論文からテック系ニュースまで、日々情報収集している。
主要な関心は日本、英米の社会保障制度。

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