日米間では様々な違いがあるが、そのうちの一つは、大学のシステムである。日本の高校、大学とは非常に異なったシステムがアメリカの大学では取られていることが多い。今年の5月に晴れて通算GPA4.0で数学科を卒業することができたのだが、4年間様々な壁にぶつかり試行錯誤を積み重ねていく必要があった。そんな経験のなか様々な秘訣を学んでいったのだが、そのうち最も重要なものを、特に理系の学生に最も役に立つであろう情報を中心に、厳選して紹介していきたい。
成績のつけ方を理解する!
教授によって、成績の付け方はまったく違う。科目によっては、期末試験の結果が全体の成績の50%を超えていったり、または期末試験がそもそもない科目もある。ただし、一般的には以下のような構造になっていることが多い。
- 中間試験(2回)
20%ずつ
- 宿題(6回)
5%ずつ
- 期末試験
30%
主な変化球としては以下のようなものがあげられることが多い。
- 宿題の代わりに小テスト
宿題の提出を義務づけるかわりに、宿題をやったかどうかを小テストを行うことによってチェックするものである。
- 中間試験を3回行い、最も低い点数を成績に入れない
「Drop the lowest grade」などというものだが、一回こけても安心というものである。しかしこれにはデリットもある。3年生のときに取った統計の授業で、最初の2回の中間試験は易しく、クラスの平均も70点を超えていたのだが、最後の中間が非常に難しく、なんとクラスの平均が40点に届かないということがあった。そうすると、3回目で挽回するのが、事実上不可能になってしまい、そこに望みをかけていたクラスメートは最終的に次の学期にとり直さなくてはいけなくなってしまった。
- プロジェクト
プログラミング系で見られることが多い。特にクラスメートと一緒にやるとなると、誰と組むかで天国か地獄の差がある。一度、テレビゲームを作る課題が出たときに、3人グループでやることになったのだが、最終的にプログラミングは全て担当させられ、1週間コンピュータールームに引きこもる羽目になったことがある。できるだけやる気のある優秀な学生と組むようにしよう。
もちろん学校、教授によっても違うが、基本的に理系で出席を取ることは非常に稀だ。学費などの関係で、2回転校をし3つ違う大学に4年間で通うことになったのだが、そのどれでも出席を取られたことはない。唯一の例外は、「Lab」と呼ばれる実習は出席を取られる。ただ、これは実習なので出席が当然なのは言うまでもないだろう。
アメリカでは、理系の学部生はまず微分・積分の基本から入ることが多く、日本の高校で理系の授業を取っていた僕は、そのような授業は基本的にまったく行かなかった。日本の進学校で数学を勉強した人ならびっくりするだろうが、僕の大学では多項式の分配法則のようなところから始まったので、テストもあまりにも簡単だった。
ただ、微分・積分も後半になると日本の高校の範囲を超えてくるので注意が必要だ。また、APやPSEOなどと言われる、(ものすごい大まかに言うと)飛び級制度のようなものを使って高校を卒業する前に微分・積分を含む大学の最初のほうの科目を全て終わらしている人もごろごろいるので、競争は激しい。
宿題は必ずやる!
「当たり前だ!」と思う人もいるかもしれないが、提出が必要でない宿題もあり、スケジュールに追われてるとついつい忘れがちである。しかし、理系では試験は基本的に宿題で出た問題に基づいていることが多い。また授業ではあまり本筋とは関係ない定理や、学部生には到底理解が不可能な応用の話などをされ、何が重要なのか見失いがちである。そんな理由から個人的には授業に行くよりも宿題をちゃんとやる方が大事だと思っている。
できたら、やる気のあるクラスメートを見つけて、宿題をまず終わらせた後、提出前に答え合わせをすることによって、ケアレスミスを防げたり、別の解法を学べたり、理解を深めることができる。
宿題はできるだけ常に満点を目指す気持ちで取り組むことをお勧めする。できるだけ全ての問題の答えをしっかり理解し、解けない問題があったら提出後に先生に聞きに行くなどの対応が重要だ。宿題はそれ自体が成績につき、さらに将来の試験対策になるので、必ず全力で取り組むことが重要だ。
先生との話す機会を増やす
アメリカの大学には「Office hour」と呼ばれる、生徒が授業外に質問をできる時間を教授が設けていることが多い。宿題でわからないところはもちろん、教授の研究の話など何でもありである。
卒業時に何かしらの形で研究なり、論文なり書かなければいけないことも多く、そんなときに「office hour」で顔見知りになった教授にお願いしに行くということも多々有る。また将来大学院に行きたい人は、推薦状が必ず必要になるので、その場合にも教授と顔見知りになっておくというのは非常に重要だ。
研究をする
アメリカの理系は基本的に研究室に配属されずに卒業できることが多い。しかし、研究室に入ることによって、様々な人に出会えたり、新しいことが学べたり、将来大学院に行く場合や就職活動で有利になることが多い。
数学は教授が学部生を研究の一環として雇ってくれることは少なく、またスケジュールの関係で研究をすることはできなかったのだが、就職活動の時に、インターンか研究の経験があるかときかれ、ないと答えたら明らかに面接官の熱意が下がったことが何度かあるので、機会があれば是非挑戦してもらいたい。
研究と言っても大それたことではなく、専門科目を始めたばっかの2年生とかでもやっていることは多いので、自分の興味のある研究をしている教授にメールなりしてみて、聞いてみるのがいいだろう。
採点をしっかり確認する
100人以上が履修している授業の場合は、まず間違いなく大学院生が採点をしていて、授業によっては、採点ミスが非常に多いことがある。大学院生といっても、他の大学出身だと、そもそもその内容の授業を取っていなかったりすることもあるので、採点がとんちんかんだったりする。
宿題やテストが返ってきたら必ず採点をチェックし、採点が明らかに間違えている場合は、メールをするなりして確認することが大事だ。
ストレスを抱え込まない
宿題が多すぎて毎日図書館に引きこもってしまったりすると、ストレスがだんだん溜まっていく。
例えば、アメリカ人には楽な一般教養も、留学生の僕には地獄でしかなく、辞書を数えられないくらいチェックしながら文学の課題を読まされたことを覚えている。結局エッセイを期限までに提出できず合格点にとどかず、次の学期にもう一度取らなければいけない羽目になったのは、苦い思い出だ。
一般教養は、「Pass/Fail」とよばれる、Cさえ取れれば、単位だけもらえて、GPAには影響しないという制度で取れる学校も多いので、そのような制度を活用することによって、少し楽を出来る。また留学生は国籍を問わずプレッシャーを感じすぎて、思いつめてしまう人が多いのも現状だ。学校によっては、勉学などでストレスを抱え込んでしまった学生用に無料の相談、カウンセリングなどを用意しているところもあるので、そのような施設を利用するのも有効だ。
言語や文化の壁を超えた上で、大学の成績を維持していくのは非常に大変だ。しかしそれを乗り越えた上で得られるものは非常に大きい。少しでもこの記事が、その役に立てたならば幸いだ。