高齢化は地方ではなく都市でヤバい。データで見る日本と東京の未来

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散々高齢化が問題であると叫ばれてはいるが、まだ差し迫った危機を感じている人は少ないであろう。
しかし、様々なデータを見ていくと、この国の行く末には凄まじい暗雲が立ち込めていることが分かる。

「少子高齢化」という言葉は、「人口減少」や「過疎化」といったワードとセットで用いられることが多いため、多くの人はなんとなく地方・田舎だけの問題だと考えているのではないだろうか。
しかし、高齢化は地方ではなく、特に都心部で圧倒的なスピードで進行する。このままでは、都市の生活保障機能は破綻する恐れさえある。

都市の住民こそ、高齢化を自分ゴトとして深刻に捉え、行動を起こさねばならない段階に来ていると言えよう。




働き手が減った分だけ、高齢者が増える

高齢化の進行は、それ自体は悪いことではない。
平均寿命が長く、健康に長生きできる国であることは世界に誇れることである。

しかし、高齢者が増えるのに合わせて、同じ勢いで若者も増えればいいのだが、そうはいかないのが最大の問題である。
少子化によって若者が急速に減り、同時に高齢者が爆発的に増えることで、社会保障制度や、社会システムそのものを維持することが極めて困難になる。これが「高齢化問題」というわけだ。

まずは、人口動態に関するいくつかのデータを見てみよう。
将来人口の推計は、様々な統計データの中でも、特に正確性の高いものであると言われている。したがって、ここから紹介するデータは、まず間違いなく現実になるであろう我が国の将来の姿である。

Aging population

こちらのグラフは、都道府県別に、2010年から2030年の間に、どのような人口構成の変化が生じるかを整理したものだ。
人口推計のうち、働くことができる現役世代人口と、65歳以上人口の2カテゴリを抽出してある。

グラフを見やすくするため、全都道府県のうち、2010年から2030年までの20年間で、65歳以上人口が7万人以上増加する都道府県のみを掲載した。
全体を大まかに見ると、地方部では現役世代の減少が大きいが高齢者はそれほど増えないこと、逆に都市部では現役世代の減少も高齢者の増加もともに大きいことが分かる。

特に、東京、神奈川、大阪、埼玉、千葉、愛知の都市圏6都府県では、日本で最も高齢化が進み、同時にそれと同じだけ現役世代人口が減少する。

これらの6都府県を合計すると、2030年までに65歳以上人口が400万人増え、現役世代人口が400万人減る。
お金を稼ぎ出す人々が400万人減り、社会保障給付を受け取る人々がその分増えるとなれば、現在の社会の仕組みを維持することなど、到底不可能であろう。

また、各都道府県と同様に、日本という国全体で見ても、高齢者が急激に増え、それを支える生産年齢人口が減少していく傾向は変わらない。

Aging population 2

2030年には、日本社会全体で、高齢者にかかる社会保障費をどのように確保するのかが大きな政策アジェンダとなるだろう。
加えて、都市部に集中しすぎた高齢者を、どのように扱うべきかも重要な視点である。

一般のイメージでは、少子高齢化と聞くと、田舎や地方部のみの問題かのように感じがちである。
しかし、最初に紹介したCHARTを見ればわかるように、今後20〜30年間で起こる少子高齢化は、都市圏において最も深刻な課題である。

東京近郊に住む人も、地方部に住む人も、同じ危機感を持って、この問題を考える必要がある。

都市部の高齢者は行き場がなくなる

国際医療福祉大学の高橋教授は、都市部の高齢化対策に関する厚生労働省の検討会において、地域別に高齢化の進捗や、高齢者施設の不足度合いを分析した資料を提出している。
緻密に将来予測を行ない、地域別の対応の必要性を訴えているが、それを見ると、東京近郊地域の高齢化と、介護施設不足の深刻さが目につく。

例えば、2010年から2040年までの間に、日本の75歳以上の人口は全国平均で55.4%増加するという。
全国平均が5割といっても、75歳以上人口の増加率の地域差は非常に大きく、例えば千葉県西部、埼玉県東部・中央部、神奈川県北部などの東京近郊地域では、75歳以上人口が100%以上増加するというのだ。

ここで問題になるのは、果たしてこれほど増加する高齢者を、どこに住まわせればいいのかということだ。
現在の人口あたりの施設の数(介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、高齢者住宅)と、将来の人口推計から予測すると、首都圏(東京・神奈川・埼玉)では、需要の大幅な伸びに対し、医療や介護が不足し、ともに厳しくなるという。

これから尋常ではない勢いで高齢者の人口が増える東京近郊では、今後、介護老人保健施設や特別養護老人ホームの大規模な新設を行うか、何らかの対応策を見出さなくては、膨張する高齢者人口を支えられず、介護・医療ともに深刻な状況に陥るであろう。

目先の対処でなく、20-30年先を見据えた政策を

主に「現在の高齢者」で大部分が構成される有権者を相手にしている以上、政治家やメディアによる議論は、近視眼的なものになりがちである。
20-30年後にどれだけ大変なことが起こるとしても、今日の大衆を巻き込み、大きなムーブメントを起こすことは非常に難しい。

しかし、高齢化に関しては、もう目を逸らすことができないほどの段階に来ているはずだ。
泣いても叫んでも、あと20年もすれば、都市部は高齢者で溢れかえり、地方はもはや高齢者すら増えず人口減少の一途を辿る。

有効な対策をこれから20年以内に打ち出せるか、筆者は若干悲観的ではあるが、新たな動きとして、近年内閣府などはアメリカ式の「CCRC」に関する議論を活発化させている。

CCRCは、アメリカにおける大規模な高齢者施設であり、非常に大きな敷地内で、スポーツ施設から医療介護までを備えており、その中で暮らしが完結するいわば「小さな街」である。
都市からまだ健康な高齢者たちが引っ越して、敷地内・周辺地域のコミュニティへの参加、運動、医療介護設備などを通して健康を保ちながら、のんびりと老後を過ごす仕組みだ。

日本版CCRCは、これを日本にも応用し、東京近郊の高齢者が、地方などに移り住み安心して生きていける受け皿を確保することを目指す試みである。
実際問題、交通の便もなく、医療施設や介護施設もないところに住むよりは、充実した設備を備えたCCRCに移り住んだ方が良いはずだ。あと20年もすれば、都市の医療・介護施設のベッド数は大幅に不足することから、こうした地方での受け皿が決定的に重要である。

昔から住んでいる土地に住み続けたいといったニーズも高いであろうから、すぐに実現・普及することは望めないかもしれないが、都市の高齢化の解消、地方の人口減少阻止という一挙両得の策として、少しは動向に期待しても良いかもしれない。

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