MicrosoftがVRを「触る」ためのドローンの特許を取得

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バーチャルリアリティ(VR)の最大の欠点は、映像と音声によってVRの世界に没入できたとしても、その世界にあるものを触ることができない、と言う点である。
仮想現実なのだから、触れなくて当たり前なのだが、視覚・聴覚のみでさえ物凄い没入感を味わえるVRに、もし「触覚」さえも備わったとしたら・・・。

米マイクロソフトが、そんな夢のような体験を可能にするデバイスの特許を取得した。
なんと、ユーザーの周囲を飛び回るドローンが、ユーザーの動きに合わせて色々なものを触らせることで、あたかもVR空間上でその物体に触っているかのような体験を味わえると言うのだ。




仮想現実(VR)の出来事を、現実で再現するドローン達

12月1日にアメリカの米国特許商標庁のホームページで公開されたばかりのマイクロソフトの特許には、VR世界の物体を「触れる」ようにするためのドローンが描かれていた。
名付けて、「Tactile Autonomous Drones(TAD、自立型触覚ドローン)」である。

VRゴーグルなどを取り付け、VR世界に没入している人物に、リアルタイムの触覚フィードバックを与えることで、あたかもVR世界の物体に触っているかの様な錯覚を与えるデバイスだ。

Patent drone microsoft

本特許の要旨(Abstract)

A “Tactile Autonomous Drone” (TAD) (e.g., flying drones, mobile robots, etc.) supplies real-time tactile feedback to users immersed in virtual reality (VR) environments. TADs are not rendered into the VR environment, and are therefore not visible to users immersed in the VR environment.

自立型触覚ドローン(TAD)(例:飛行ドローン、可動ロボットなど)は、仮想現実(VR)空間に没入しているユーザーに、リアルタイムの触覚フィードバックを提供する。TADはVR空間では描写されないため、[その]ユーザーには見えない。

In various implementations, one or more TADs track users as they move through a real-world space while immersed in the VR environment. One or more TADs apply tracking information to autonomously position themselves, or one or more physical surfaces or objects carried by the TADs, in a way that enables physical contact between those surfaces or objects and one or more portions of the user’s body.

様々な実装形態で、一つまたは複数のTADが、VR空間に没入しているユーザーの現実世界での動きを追跡する。その追跡データを使って、一つまたは複数のTADは、TAD自身や、TADが運んでいる一つまたは複数の物理的な面またはモノを、ユーザーの体と接触させることができる場所に位置付ける。

Further, this positioning of surfaces or objects corresponds to some real-time virtual event, virtual object, virtual character, virtual avatar of another user, etc., in the VR environment to provide real-time tactile feedback to users immersed in the VR environment.

さらに、VR空間に没入しているユーザーに、リアルタイムの触覚フィードバックを提供するため、この物理的な面またはモノの配置は、VR空間におけるリアルタイムの仮想の出来事(仮想の物体、キャラクター、アバター、他のユーザー等)と一致している。

(Quoted from the United States Patent 20160349835 / Dec 11, 2016)

HololensなどのVRデバイスを身につけて視覚・聴覚でVR空間に没入している人物に対し、周囲をドローンやロボットが動き回り、適材適所(?)で色々なモノを人物に触らせ、触覚の再現を試みると言うわけだ。
上記の画像でも登場しているが、今回の特許で申請されているドローンのイメージ図は次の様なものだ。

Patent drone microsoft 001

(Taken from the United States Patent 20160349835 / Dec 11, 2016)

イラストは特許申請用のものであるから、露骨に手がぶら下がっていたりと、魅力的な印象はほとんど感じられない・・・。
しかし、確かにこの様なドローンが人間の周りを飛び回れば、VR世界で手を伸ばした時に、その先にある物体に近い感触をもたらすモノを、現実世界で触らせることができるかも知れない。

Patent drone microsoft 002

(Taken from the United States Patent 20160349835 / Dec 11, 2016)

また、飛行タイプのドローンだけではなく、地上を動き回るロボットデバイスも、今回の特許申請に含まれている。

こちらのイラストは一見すると非常に滑稽な絵に見えてしまうが、要するにこの様な多種多様な感触をもたらす物体を用意しておき、VR世界で硬いものを触った時には硬いものを触らせ、VR世界でコップで水を飲んだのであればコップを口に当てるといった作業をドローンなりロボットが行うということだ。

仮想現実(VR)が、幻覚剤を超える日

こうした技術により、仮想現実の技術は、近いうちに薬物に近い幻覚をもたらすことができるほどに強力になると、マイクロソフトは予想しているようだ。
VRが、視覚・聴覚・触覚を始め複数の感覚器官に働きかけることで、まるで強力な幻覚剤に近いほどの幻覚をもたらすことが可能になるためである。

レドモンドのマイクロソフト本社で研究員を務めるMar Gonzalez Franco氏は、「我々は、2027年までには、知覚されている現実を[VRと]掻き混ぜ、あるいは変えてしまうほどの幻覚効果をもたらす、複数の感覚器官に働きかけるユビキタスなVRシステムを保有しているだろう。」「この技術によって、人間は自らの感覚器官を再訓練・再調整し、また改善することになる。」と述べている。

確かに、VRデバイスで視覚・聴覚を支配されると、例えばジェットコースターの映像を見せられると転んでしまうといった具合に、簡単に幻覚・錯覚を引き起こされてしまう。

これに加えて、VRゲームの中で他人と握手をしたら、実際に他人の手に触れた感覚が得られるようになるとすれば、人間は完全にVRを「現実」と感じてしまうようになるのではないか。

今回の特許は、すぐに実用化に結びつくものというよりは、こうした技術の発展の基礎となるものだろう。
しかし、もしFranco氏の言うように、2027年までにこうした技術が発展し、触覚も仮想現実(VR)上で再現できるようになれば、ゲームなどのエンターテイメントの世界を超えて、人類の全く新しい生活が待っているかも知れない。

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