nipponomia

キャリアとの激闘の末、格安SIMでおばあちゃんのスマホ代を12万円以上安くした話

キャリアとの激闘の末、格安SIMでおばあちゃんのスマホ代を12万円以上安くした話

その戦いは、ふとした拍子に、祖母のスマホ代の請求書を目にしたことから始まった。
docomo、au、SoftBankの3大キャリアのうち、とある1社と長らく契約している祖母のスマホ代の請求書合計額は、なんと1ヶ月だけでも1万700円にも及び、データ通信をほとんど使っていない後期高齢者の祖母のスマホ代としては、ありえないほど高すぎた。

か細い年金額で生活をしている祖母は、2年間で24万円ものお金を、大して使いこなしてもいない携帯電話代として、キャリアに搾り取られていたのだ。

しかも、おばあちゃんは「親切な店員さんがお得なプランにしてくれたの」と信じて疑わない。

私には、怒りがふつふつと湧き上がってきた。
複雑な料金体系を用意し、あたかも様々な割引が適用されているかのように見せかけ、使いもしないオプションを大量につけて、日本の高齢者の貴重な年金資産の1〜2割を搾り取っている携帯キャリアを許せない、と。

祖母よりも圧倒的にスマホを使いこなしているであろう私でさえ、MVNOと言われる格安SIM会社に乗り換えたため、スマホ代はわずか月々1,700円程度に収まっている。
祖母と違って音声通話のかけ放題を使用していないことを差し引いても、祖母の携帯代はあきらかに過剰である。

これは、祖母の携帯代のあまりの高さに気がついた孫である私が、キャリアが用意するあらゆる罠を乗り越え、ついに2年間で12万円もの節約に成功した戦いの記録である。




節約の第一歩は、おばあちゃんの携帯請求書の分析から

うちの祖母は、後期高齢者には珍しく、iPhoneを使用している。
これも「スマホを使ってみたい!」という思いを利用され、キャリアに契約させられたものであろうが、それ自体は本人の満足や、家族とのLINEを楽しむことにつながっているから、まあ良いとしよう。

問題は、祖母のiPhoneの月々の利用額である。
ある月の請求額を参考に、いかに搾取されているかを分析してみよう。

iPhone6を使用する祖母の月々の請求額内訳

  • 通話定額基本料:4,200円
  • 2年契約割引:-1,500円
  • パケット5G:5,000円
  • SMS通信量:300円
  • その他通話料:490円
  • Web使用料:300円
  • キャリアオリジナル故障保証:650円
  • 機種変更先取り:300円
  • 月々割:-2,635円
  • 下取り:-450円
  • iPhone6分割:3,615円

これで合計額は月々10,270円である。
2年間で実に24万6,480円、税込ではおよそ26万6千円をドブに捨ててきたことになる。

まず明らかに目につくのが、5GB分ものパケット定額使用料である。
自宅にWi-Fiのある後期高齢者が、一体どんな使い方をすれば5GBに到達することができるのか。この5GBプランを契約させた販売員は、相当な悪人である。

また、意味不明のオプションも多数つけられている。故障保証は、修理代を直接払ってくれる訳ではなく、修理した後にこれまた月額使用料からちょっとづつ割り引かれるという、永遠にキャリアから解約し逃れられない仕組みになっている。
どうせこんなに高い金額を払って故障保証をするならば、Apple Careに加入した方がはるかにマシである。

また、機種変更先取りと称して、毎月300円を支払っているが、これは割賦販売の残債を払いきらないうちに機種変更を可能とするものであるが、そもそも残債を残した状態で最新機種に乗り換え続けなくてはならないほどミーハーではなく、後期高齢者には間違いなく不要なオプションである。

そもそも屋外ではLINEと路線検索くらいしか使わない祖母は、LTEである必要もなく、割安な低速回線でいいのではないかなど、疑問は次々と湧いてくる。
私は、この請求書を見て、本当に必要な分だけを格安SIMで購入すれば、圧倒的に安くすることができるであろうと踏んだ。

格安SIMでは、低速である代わりに容量制限のない激安プランや、1GBだけ高速通信をつけオーバーした分は低速回線に切り替えるなど、非常に豊富な選択肢が用意されており、本人の使途に合わせたカスタマイズが容易なのだ。

もし、自分の家族の請求書を見て、上記のように明らかな無駄が見つかったら、格安SIMへの乗り換えを検討することをお勧めする。

格安SIMへの移行計画を立てる

格安SIMに移行することを思い立ったら、真っ先に考えるべきことがいくつかある。それを一つ一つ紹介していくとともに今回の私の決断を紹介していこう。

ステップその1:MVNOのキャリアを選ぶ

MVNOとは、一般に格安SIMなどと呼ばれている携帯回線の提供者だ。
これらは、docomoを中心に、最近ではauなどからも携帯回線のレンタルを受け、docomoやauより圧倒的に安い価格で電話やインターネットのサービスを提供する企業たちだ。

有名どころでは、
楽天モバイルDMMモバイル、Nifmo
などが存在するが、これらの3社はいずれもdocomo回線を使用している。

今回は、祖母は電話のヘビーユーザーであることから、「かけ放題」を最重要視し、LINEでんわ等のようにネット回線を使用した通話定額サービスではなく、電話回線を利用した安定した通話を、時間無制限で行えるプランがある楽天モバイルを使用することにした。

これに伴い、今回はDoCoMo系SIMカード(通信を行うために必須の小さなチップ)が使用できる携帯端末を入手する必要があることになった。

ステップその2:携帯端末を調達する

通常、docomo、au、SoftBankの3大キャリアから携帯端末を購入すると、その会社でしかその端末を使用できない「SIMロック」と呼ばれるものがかかっている。

そのため、例えばソフトバンクでSIMロックされたiPhoneを持っていたとしても、DoCoMo系の格安SIMに乗り換えたいと思った場合には、SIMロックが解除されたiPhoneか、DoCoMoのSIMロックがかかっているiPhoneを入手する必要があるのだ。

最近は、要望があればSIMロックを解除することがキャリア側に義務付けられているため、ソフトバンクのiPhoneを持っていたとしても、SIMロックを解除し、楽天モバイルのようなDoCoMo系の格安SIMに移行することも可能だ。

今回は、残念ながら祖母のiPhoneにはキャリアのロックがかかっており、しかもSIMロック解除に対応していないiPhone6であったため、新たにDoCoMoでも使用できるiPhoneを調達しなくてはならなくなった。
そこで、iPhoneに慣れてしまった祖母に不自由がないよう、docomoのSIMロックがかかっているiPhone6sを45,000円で中古で購入することとした。

本当は、2万円からSIMフリーの新品が購入できるAndroidスマートフォンのHuaweiなどに乗り換えるのがベストなのだが、後期高齢者に今まで使っていなかったAndroidへの乗り換えを強要すると、操作感に慣れるまでがめちゃくちゃ面倒臭いのではないかと思い、苦肉の策で中古iPhoneの買い替えという道を選んだ。

ステップその3:MNPを行うための準備をする

携帯電話の番号を変更することなく、他社の携帯回線に移行することを、「MNP」と呼ぶ。

今契約している携帯会社に、MNP予約番号の発行を依頼し、その番号を乗り換え先の会社に伝えることで移行できる。
MNP予約番号は、発行するだけであればまだ解約は確定せず、乗り換え先の企業に当該番号を伝えて切り替えが行われた瞬間に、以前のキャリアとは解約されることになる。

通常、MNPはWebまたは電話で申し込み、予約番号を受け取ることができるが、docomo、au、Softbankは、基本的に専門のコールセンターに電話をしなければならない。

以上の3ステップを終えれば、キャリアから格安SIMへの移行作業はほぼ完了である。
いや、完了するはずだったのだが・・・。

MNP予約番号を入手するのは至難の技!キャリアの高齢者洗脳手法

MNP予約番号を取得するためには、Webでの申し込みは受け付けられておらず、平日の日中に電話をかけなくてはならない。
当然ながら平日の日中は働いている私がこの電話を行うのは難しく、おばあちゃん本人に電話をかけてもらうことにしたが、これが罠だった。

「今日中にMNP予約番号をもらう電話しといて」と伝えて朝出勤した私が、夜家に帰ってきて目にしたのは、完全に洗脳されたおばあちゃんの姿だった。

「最新のiPhoneをもらって、契約を続けたらお得になるんやって!」と熱く語る祖母に対し、僕が作成した格安SIMに移行した場合の月額の試算を見せても、全く聞かない。
どれだけキャリアに騙されているだけだと言っても、「だから安くなるって言ってたんやから!」「ポイントを使わないと損!」の一点張りである。

せめてMNP予約番号を受け取ってくれていればよかったのだが、まんまと言いくるめられた祖母は、予約番号ももらわずに、コールセンターの人への感謝の気持ちいっぱいで電話を切ってしまった。

油断をしていたが、MNP予約番号を受領するためのコールセンターのスタッフは、解約を思い立った高齢者を引き止める最強のプロ集団である。
ポイントや割引、特別なキャンペーン、継続すればするほど得といった謳い文句を並べ立て、「解約したら大損をする」「継続すると大きな割引を受けられる」ということを徹底的に刷り込んでくる。

この時点で、格安SIMに乗り換え節約するという僕の野望は若干折れ気味で、Webのみでサクッと作業が完結するほど甘くはなく、おばあちゃんの洗脳を解くことから始め、再度MNP予約番号を入手するために電話をしなくてはならないという、尋常ではなく面倒臭いこの作業にうんざりとしてきていた。

この期に及んでタブレットを押し売りするキャリアの実態

すっかりMNP予約番号発行のためのコールセンターに洗脳されてしまったおばあちゃんを説得するため、まずは某キャリアの店舗に行ってもらい、キャリア側が掲示する月額などを、全てを紙に書き込んでもらってくるよう指示した。

そして、「孫が詳しいので、資料をいただいて孫に聞きます」という最強の防御魔法を唱えられるように訓練し、キャリアの店舗へおばあちゃんを送り込んだ。

これには三つの意味がある。
一つは、おばあちゃんが口頭で聞いただけではあまりに理解度が低く、キャリアに残った方が安いのか、格安SIMに乗り換えた方が安いのか、判断がつく情報が手に入らないため、どうしても紙に書いてもらう必要があるということ。
二つ目に、格安SIMに移行した方が本当に安いということを祖母に納得させるため、正確な合計金額の比較が可能になる内訳の数字が必要になるということ。
そして、最も重要なのは、スマホに詳しい孫に聞かれるとなると、店側も格安SIMに対抗しうるような割安な料金プランを掲示してくるということだ。

この段階で掲示されたプランは以下のものだ。

キャリア側の掲示プラン:iPhone7を2年間使用する場合

  • 基本料:2,916円
  • ネット基本料金:324円
  • パケット2G:3,780円
  • iPhone7一括:87,840円
  • ポイント利用:-10,000円
  • 月々割:-2,805円
  • 下取り:-900円

これで合計額は月々6,558円である。
しかし、実際には祖母は1万ポイントも所持していないため、それを差し引いて月々6,975円ということになる。

確かにこれだと、必要かどうかは別にして、最新のiPhone7を入手しつつ、当初の10,700円もの請求額からは毎月4,000円程度割り引かれることとなる。

ただ、そもそもなぜ最初から上記のような割安な料金プランを祖母に勧めずに、毎月使いもしない5GBものパケット定額を押し付け、何年も搾取を続けてきたのか非常にイライラするところだ。

しかも、さらに悪いことに、割引を受けるための「裏技」と称して、敵はタブレットの抱き合わせ購入を祖母に刷り込んできた。

ロジックとしては、タブレットを購入するとタブレット本体代金は割引で相殺され、さらにセット割が付くためにお得になります、というものだ。
しかし、掲示された紙に記載された数字を足し合わせていくと、確かにタブレット代金は大幅に割り引かれてはいるが、パケットが1GBのプランでスマホとタブレットでシェアをしたとしても、2年間24ヶ月で考えると合計月々7,385円となり、全体としてはさらに高額になってしまう。

祖母はまたも見事に洗脳され、これまでタブレットが欲しいなどと一度も言っていなかったにも関わらず、「タブレットを持ったら割引が効くんやって!」「タブレットも買おうかなあ」などと言い出していた。

私のイライラも頂点を超えて、もはやキャリアの商魂への尊敬の念と、なぜこのような詐欺集団がまかり通っているのかについての疑問ばかりが湧いてくるようになった。
此の期に及んで、絶対に使わないであろうタブレット契約という余計なお荷物を押し付け、さらに祖母から搾り取ろうとはいい度胸である。

祖母には、タブレットを買うと割引額は増えても結局合計額が割高になってしまうこと、余計なものを一つ契約すると解約時により大きな違約金を取られることになること、最終的に格安SIMが圧倒的に安いことを、数字を示しながら丁寧に説明し、ようやく乗り換えを実行することになった。

結局いくら節約できたのか?格安SIM移行後の支払額

祖母に、「孫に全部任せているのでとりあえずMNP予約番号をください」という防御魔法をひたすら唱えさせ、ようやくMNP予約番号を手にいれた私は、ついに楽天モバイルとの契約に乗り出すことができた。

実際に契約したプランは、次のとおりである。

楽天モバイルでiPhone6Sを2年間運用する場合

  • 通話SIMベーシックプラン:1,250円
  • 通話SIM契約割引:-1,000円*6ヶ月
  • かけ放題:2,380円
  • iPhone6S 中古:45,000円

これで端末から通話料、ネット代まで全ての合計額は月々5,250円である。
2年間で12万6,120円となるので、当初の大手キャリアと契約していた際の24万6,480円と比べると、実に12万円を超える圧倒的な節約効果が得られた。

まず、おばあちゃんが強く希望していたかけ放題は、わずか2,380円で実現することができた。
また、祖母のスマホの使い方として、自宅ではYouTubeで趣味の歌の練習をすることがあるが、基本的に屋外では大容量のインターネットは使用しないことから、低速回線のみのベーシックプランを契約した。

低速回線と言っても、LINEの利用や、地図の確認、路線検索程度であれば、普通に問題なく利用できることから、これで十分であろうと考えた。
もちろん、自宅ではWifiにつながって、高速回線を利用できるように設定してある。

しかも、この節約効果は、おばあちゃん本人の希望により、中古に見えない美品かつ比較的新しい機種のiPhoneを購入するなど、割と贅沢した上での価格となっている。
本気で節約をするのであれば、さらに一世代前のiPhone6を中古で買えばより安上がりであるし、そもそも新品のAndroidスマートフォンを購入すれば、端末代は2万円程度で済んでしまう。
さらなる節約のポテンシャルを残して、これだけの節約に成功しているということに注目いただきたい。

格安SIMに移るだけで10万儲かる!今すぐ移行に取り組むべし!

このように、キャリアはポイントが無駄になるとか、割引が様々あると言った甘い言葉を通じて、なんとか引きとめようとしてくるが、最大限にポイント等を無駄にして損をしたとしても、それでも格安SIMに移行した方が合計金額は安くなることの方が多い印象である。

子ども、お母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんなどあらゆる家族メンバーの携帯代を今一度見直せば、2年間で家族で海外旅行に行けるほどの節約を達成することも決して夢ではない。

僕の戦いの記録を参考に、少しでも多くの人が格安SIMへ移行し、それによって高齢者の年金の使途が、携帯代という無駄なものに消えていくことのないよう祈っている。

About The Author

nipponomiaCo-Founder, Writer小松明
平成生まれ。神奈川出身。
米国でパブリック・アイビーの一つに数えられる州立大学への留学を経て、某旧帝大を次席で卒業。TOEIC満点。現在はNGO勤務。

英語の読解力にはかなりの自信があり、海外の学術論文からテック系ニュースまで、日々情報収集している。
主要な関心は日本、英米の社会保障制度。
Follow :

Leave A Reply

*
*
* (公開されません)